サラリーマンのすらすらIT日記

IT関連を中心とした日々を綴ります。
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2013/09/01

過去の新訳論争と柳瀬氏のこと

昨日の続きです。過去にも新訳論争があったということで、佐藤氏の論文に紹介されているのは、北御門二郎氏によるトルストイ新訳に対する、ロシア文学者原卓也氏の批判です。私はこの新訳者の名前を聞いたことがあるような、ないような感じです。まあ、あまりトルストイの作品が好きでない私ですから...

北御門氏の翻訳はわかりやすい、と原氏は認めた上で「わかりやすければそれでいいのか?」という疑問を投げかけます。ロシア文学の翻訳に関して二葉亭四迷に始まる従来からの翻訳の精神である「原典至上主義」、すなわち原文のスタイルを尊重して翻訳し、そこから作者の思想を探ろうとする試みを続けてきたことを考えると、北御門氏の読みやすさを主眼とした翻訳は疑問ではないかと。

それに対して北御門氏も文章で、作者の意図を汲み取って日本語としてわかる翻訳である必要がある、と真摯に反論します。同氏は戦争反対の立場から兵役を拒否した平和主義者で、トルストイに私淑したこともあるとか。さすがに反論の仕方も丁寧で気持ちがいいものです。近年の光文社による反論とは大違いです。

このあと佐藤氏の論文で紹介されているのが、柳瀬尚紀氏による「ユリシーズ」の翻訳。同時期に出た丸谷才一氏らの翻訳との比較です。丸谷氏らによる翻訳は数多くの訳注を付したもので、学問としての英文学研究の成果としての翻訳。一方柳瀬氏は、訳注を付さず、日本語の言葉遊びを駆使した"読める本"としての翻訳。両者の違いは、原氏と北御門氏の翻訳に対する見解の相違に近いものです。

ここからは私の想像です。柳瀬氏は確か早稲田大学で教鞭を取られていたのですが、ある理由から退職したと将棋雑誌に書かれています(柳瀬氏は大の将棋ファン)。今は翻訳活動のみに専念されているようです。柳瀬氏は自由な翻訳活動を実践するために退職したのではというのが、私の想像です。つまりアカデミックな翻訳界は原典至上主義で、自身が考える自由な翻訳はこのアカデミズムにあっては不可能だと。前述の北御門氏も市井の翻訳家ですし。佐藤氏の論文を読みながら、このように考えました。

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